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今回は宅建試験における頻出項目、8種制限の一つである手付金等の保全について解説します。
未完成物件と完成物件の区別に応じた取り扱いの違いをしっかりとおさえるようにして下さい。
手付金等の保全とは
宅地建物取引業者は、自らを売主となり、宅地建物取引業者でない者を買主とする宅地又は建物の売買に関しては、原則として手付金等の保全措置を講じた後でなければ、買主から手付金等(代金の全部又は一部として授受される金銭及び手付金その他の名義をもって授受される金銭で代金に充当されるものであって、契約の締結の日以後当該宅地又は建物の引渡し前に支払われるもの)を受領してはならないとされています。
これは買主を保護するための規定ですね。
要するに手付金等を受領した後に宅地建物取引業者の経営状態が悪化した場合などにも、買主が手付金等を回収できるように、このような制限規定を置いているわけです。
ただし、以下のような場合には手付金等の保全措置が不要となります。
未完成物件 | ①手付金等の額(既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額)が代金の額の100分の5以下であり、かつ、1000万円以下であるとき ②買主への所有権移転の登記がされたとき、買主が所有権の保存登記をしたとき |
完成物件 | ①手付金等の額(既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額)が代金の額の10分の1以下であり、かつ、1000万円以下であるとき ②買主への所有権移転の登記がされたとき、買主が所有権の保存登記をしたとき |
未完成物件・完成物件共に①は手付金等の金額が比較的少額なので、保全措置まで求める必要はないだろうということです。
未完成物件と完成物件を比べた場合に未完成物件の場合の方が、保全措置を講じなければならない金額の基準が厳しくなっているのは、未完成物件の場合の方が買主にとって手付金等を交付するリスクが高いからです。
また、②は買主が、所有権移転登記や所有権保存登記を受けることができれば、ほぼ確実に所有権を手に入れられたことになるので、もはや手付金等の保全を求める必要性はないだろうということです。
保全措置の方法は?
手付金等の保全措置が必要な場合、具体的には以下のような保全措置の方法がとられることになります。
未完成物件 | 保証委託契約 保証保険契約 |
完成物件 | 保証委託契約 保証保険契約 手付金等寄託契約 |
保証委託契約とは銀行等との間で、宅地建物取引業者が受領した手付金等の返還債務を負うこととなった場合に、銀行等がその債務について連帯保証することを委託する契約を締結し、かつ、当該銀行等が手付金等の返還債務について連帯保証することを約する書面を買主に交付する方法のことを言います。
次に保証保険契約とは保険事業者との間で、宅地建物取引業者が受領した手付金等の返還債務の不履行により買主に生じた損害のうち少なくとも当該返還債務の不履行に係る手付金等の額に相当する部分を当該保険事業者が穴埋めすることを約する保証保険契約を締結し、かつ、保険証券又はこれに代わるべき書面を買主に交付する方法のことを言います。
最後に手付金等寄託契約とは次の2つの手順を踏むことによってなされる保全措置の方法のことを言います。
①国土交通大臣が指定する者(指定保管機関)との間で、宅地建物取引業者が自己に代理して指定保管機関に手付金等を受領させることとするとともに、指定保管機関が、宅地建物取引業者が受領した手付金等の額に相当する額の金銭を保管することを約する契約(手付金等寄託契約)を締結し、かつ、手付金等寄託契約を証する書面を買主に交付する。
②買主との間において、買主が宅地建物取引業者に対して有することとなる手付金等の返還債権の担保として、手付金等寄託契約に基づく寄託金の返還債権について質権設定契約を締結し、かつ、当該質権設定契約を証する書面を買主に交付し、及び当該質権設定契約による質権の設定を確定日付のある証書をもつて指定保管機関に通知する。
未完成物件については保全措置の方法として保証委託契約と保証保険契約のみが認められ手付金等寄託契約については認められていません。
未完成物件は完成物件に比べて手付金等を交付する買主のリスクが高いので、保全措置の方法として、より確実性の高い、保証委託契約と保証保険契約のみが認められているわけです。
(上記の説明のとおり、保証委託契約と保証保険契約では財務基盤がしっかりしていることについて、国からある意味のお墨付きのある銀行等と保険会社が、それぞれ関与しています。)
なお、この場合の保全措置は手付金等の全額について講じる必要があります。
たとえば、価格3000万円の完成物件の売買に関して売主である宅建業者が買主から手付金500万円を受け取る場合には、事前に500万円全額について保全措置を講じる必要があるということです。
保全措置が不要となる基準300万円(3000万円の10分の1)を超える200万円の部分についてだけ、保全措置を講じればよいわけではないので、その点、誤解しないようにして下さい。
なお、売主である宅建業者が保全措置を講じない場合、買主は手付金等を支払わないことができます。
売主である宅建業者が義務を果たさないのなら、買主も義務を果たす必要がないということです。
まとめ
・宅地建物取引業者は、自らを売主となり、宅地建物取引業者でない者を買主とする宅地又は建物の売買に関しては、原則として手付金等の保全措置を講じた後でなければ、買主から手付金等を受領してはならない
ただし、
未完成物件については
①手付金等の額(既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額)が代金の額の100分の5以下であり、かつ、1000万円以下であるとき
②買主への所有権移転の登記がされたとき、買主が所有権の保存登記をしたとき
完成物件については
①手付金等の額(既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額)が代金の額の10分の1以下であり、かつ、1000万円以下であるとき
②買主への所有権移転の登記がされたとき、買主が所有権の保存登記をしたとき
は手付金等の保全措置が不要となる。
・手付金等の保全措置の方法は
未完成物件については保証委託契約、保証保険契約
完成物件については保証委託契約、保証保険契約、手付金等寄託契約
のいずれかとなる。
・売主である宅建業者が保全措置を講じない場合、買主は手付金等を支払わないことができる。
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